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「じいちゃん頑張ってたけど、ちょっと前にね・・・・・・。まだあったかいわ」
静かに呟く祖母。
白い服には、赤黒い血が飛び散った跡があった。
駆け寄る両親。
「ほんとだ、まだあったかい・・・・・・」
「じいちゃん、頑張ったな」
私はその背中から、そっと覗くように祖父を見た。
不思議だった。
ベッドで眠っているように見えるだけだと思っていた。
なのに、そこに横たわっていた姿は「なっちゃん。運動会、頑張んなさい」と優しく応援してくれた祖父とも、時折苦しそうに咳込んでいた祖父とも違い、私は少し怖くなった。
祖父の『形』をしたものだけが、ここにいる。
この時、私は死というものを実感したのだろう。
「なっちゃんも、じいちゃんの手、触ってみな?あったかいしょ?」
「・・・・・・うん」
祖母に手を引かれ、言われるまま祖父の温もりを感じても、どこか虚しい気持ちでいっぱいになるだけだった。
おじいちゃんは、もういなくなっちゃったんだ・・・・・・と。
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