ヂャフダイ・シェーカー

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「問題なしだ通っていいぞ。一応滞在できるのは一週間、それ以上居たいなら別書類を用意してもらうがその必要はないだろう」 「ええ、大丈夫。ありがとうね」 女性はイルクテージ側のドアを開き、街に入っていった。 バタンと言う音が建物に響く、最近風が強くなってきた。今も外ではピュルピュルと笛をめちゃくちゃに吹き鳴らすような音が聞こえてくる。 「国境検問にあたって最も留意しなければならないこと。それは相手の目を見ながら会話をすることだ。 人の心理ってのは目玉と手に顕著に現れるからな。少しでも怪しかったら躊躇せずに身体検査に入れ、お前にはその権限がある。 あと要注意なのは何かにつけ自分の行動に理由付けをする輩だな。嘘で塗り固めたそう言う奴らは案外疑われると弱いから」 椅子に座った大きな後ろ姿から突然声が飛び出してきた。ゆっくりとこちらの方を向きながらも言葉は途切れない。モッサリと口元に蓄えたヒゲが口を動かすたび不思議な動きをしていた。彼の名はジェームズ。俺の直属の上司であり何年もこの東検問所で国境管理をしているベテラン検問官だ。 ただ、仕事に対する姿勢は少しばかり大らかな様で真昼間に関わらず顔は赤く、吐く息は酒気を帯びている。     
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