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「なんだ、今さら。」
話の意図が分からずキョトンとなった。悟志の言葉に、何故か青弥が目を見開く。
「今さらって―――。今、初めて知ったんだけど。」
「鈍いな、おまえ。」
「そりゃ、優しくなったけどさ!犬扱いだし、ペット的な愛情が深まったというか。だったら、言ってくれても、」
ブツブツ―――と、青弥は文句を言いながら、段々と目元を紅くしていく。照れているらしい。
青弥の白い肌に、紅が色鮮やかだ。
―――可愛いヤツだ。
「じゃあ、分かりやすく、キスでもするか。」
「き、き、き、」
「あんな事しておいて、キスで動揺するな。」
「あ、う―――、ごめん。」
青弥が気まずそうにキョロキョロと目をさ迷わせる。しかし、その右手は悟志の体を引き寄せようとしていた。
―――こいつ、反省してないな。
先日のような暴挙に出ぬよう、ここは1つ釘を指して置かねばならない。
「おまえ、2度と主導権を握れると思うなよ。」
「ええ!?なんで、」
青弥が悲鳴じみた声を上げる。悟志を押し倒す気だったのだろう。思った通りだ。
「初心者のおまえに身を委ねたら、オレが流血沙汰だ。いいから、任せておけ。気持ち良くしてやるから。」
「いやいや、悟志さんに怪我させないように、ちゃんと準備するし。やっぱりさ、好きな人を抱きたいんだってば。」
「ああ、オレもだな。」
悟志が無表情に言い放つと、青弥が口を開けたまま固まった。何を考えているのか、視線が忙しなく動き回る。
しばらく無言で見下ろしていると、考えがまとまったらしく、青弥がキリッとした真剣な顔をする。
妥協点を見出だしたのか、自分が折れる事にしたのか。
「要相談でお願いします。」
青弥の折れたようで折れてない言葉に、ぷっ―――と、悟志は吹き出した。
そういう所も可愛く見えるのだから、恋とは不思議なものだ。
「じゃあ、まずは、キスから始めようか。」
嬉しそうに笑う青弥へ、悟志はゆっくりと顔を寄せた。この可愛い恋人に本気で迫られたら、自分が折れてしまうのだろう―――と、予感しながら。
End.
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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