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「『もん』はやめろ。気持ち悪いなんて初めて言われたぞ。青弥、美的感覚、崩壊してるんじゃないのか?ホストなのに残念な奴だな。」
「してないし~。悟志さんがカッコいいのはちゃんと分かってるもん。」
「―――だから『もん』はやめろ。」
実際のところ、常日ごろ女子生徒に囲まれているから、容姿を褒めるような言葉には慣れている。
普段の悟志であれば、ありがとう―――とでも笑って返すのだが、何故だか青弥に対しては猫を被る気にならない。
家族の前ですら猫が通常装備である悟志にとって、これは珍しい現象で、そんな自分にふと戸惑う瞬間がある。
失礼な話だが、青弥を人間と思っていないのではないかと理解していた。
―――ペット感覚?いや、可愛くもないし、可愛いがってはいないか。
「今日の帰りは何時?」
「そうだな、夕方の6時には帰ってくると思うが。」
悟志が答えると、青弥が嬉しそうに顔を輝かせる。
「本当!?じゃあ、早めの夜ごはん、どっかで一緒に食べない?」
満面の笑みを向けられ、悟志は顔を歪めた。青弥と外で食事など冗談ではない。
「勘弁してくれ。」
「え~!なんで?」
「夕方って事は出勤前だろう?そんなけばけばしい格好の男と食事したくない。オレの品位が疑われる。」
「ひどい~!」
ぎゃいぎゃいと騒がしい声を聞きながら、どうすべきか―――と、また悟志は思う。
家の前で青弥を拾って、明日の夜でもう1週間になるのだ。
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