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お題「桜の便り」2018.3.31
※『ボーダーラインを越えて』の二人との話
淡い色の花びらが咲き誇る頃、一通のエアメールが届いた。宛名には、同僚だった佐々原と、同じ頃に生徒だった西倉の名前が連なっている。
―――とうとう、か。
西倉が高校を卒業して、ちょうど六年になる。二人が恋に落ちる様から、海外へ移住するまで、仲間として、友人としてずっと見てきた。
ノロケにしか聞こえない悩み相談や度々勃発する痴話喧嘩に、幾度となく巻き込まれた事も、今となっては良い思い出だ。
封筒の中には、そんな二人が微笑み寄り添う写真と、めでたい知らせが桜色の紙に記されていた。
結婚しました―――と。
逃げ回っていた臆病な佐々原を、相変わらずの強引さで西倉が取っ捕まえたのだろう。二人の姿が容易に想像できて、思わず忍び笑いが出た。
西倉は世界的なサッカー選手だから、同性との結婚が公になれば大層な騒ぎになる筈だ。大丈夫だろうか、と心配してしまう。己は決してお節介な性格でも、何かに祈るような性質でもないのだが。
―――どうか、彼らに多くの祝福を。
そう願わずにはいられない。
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