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三原が声を張り上げる。
皆がざわざわとしていたから。
「実家以外の外泊をするときは、まず親からの許可の手紙か、電話が必要になる。そのどちらかがあれば許可する」
そんなの家にいる時より厳しいとの声。
誰かが手を挙げた。
「先生、もし実家に帰るっていって、他へ泊ったことがばれたらどうなるんですか」
「安心しなさい。こちらでは処分はしない。そういう事実があったとご実家には報告させてもらう」
生徒たちが黙った。
厳しい家では、きつく叱られるだろう。
「じゃあ、門限に間に合わなかったら? 僕たち野宿とか?」
少しふざけた言い方だったから、失笑がもれた。
三原はにこりともしないで言う。
「皆、わかっているとは思うが、各自持っている部屋のカードキーは寮へ戻っているかどうかわかるシステムになっている。夜九時の時点で、まだ戻っていない生徒がいれば、こちらからリマインド(思いださせる)する」
「えっ、先生が?」
「そうだ。ラインで帰ってこいと連発したメッセージが五秒ごとに送られる」
騒然となった。
冗談じゃない、それじゃスパムメールだなんて叫ぶ生徒もいた。
三原が含み笑いをした。
「五秒ごとは冗談だ。そのくらい察して笑え。十分置きくらいにしてやろう」
三原もそんな冗談みたいなことを言うんだって思った。
けど、皆その話術にはまっていた。
五秒と言われて驚いたが、十分おきと言い直されて、まあそれならいいかって、皆が納得したからだ。
「間に合わなかったら、私達、寮監に連絡すること。メールでもいい。必ず誰かはいる。その際にはちゃんとドアを開けてやる」
「なんだ。遅れても大丈夫なんだ」
ほっとしたのか、そんな軽い調子で口走った生徒。
「もちろん、生徒の安全が第一に考慮される。しかし、その後、すぐに部屋へ帰れるわけじゃないぞ。先生の説教のおまけつきだ」
笑えない冗談ってこういうことを言うんだって思った。
皆がお互いを見て、サイアクだ、遅れないようにしようって思っていた。
「以上だ。後の細かいルールは掲示板に貼ってあるし、その日の当直の先生の名前も随時書くからチェックしておくようにな」
三原はそう言って座ろうとした。
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