終わりと始まり

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放課後の校舎裏、カラスが鳴いている 「おいおい!金持って来てねーのかよ! あー、持ってこれるわけねーか!クソ貧乏なてめーがよぉ!」 ギャハハという汚らしい笑いかたをした学生服の3人組が俺を囲んでいる 壁際に追い込まれ逃げることもできない 貧乏なことを知ってんだからそんな不毛なことを言わないでほしい 「てめえ、何すましてやがんだよ! ムカつく野郎だなあ!!」 いきなり脇に立ってたやつが顔面にパンチを打って来た 壁に体全体を叩きつける その場にしゃがみ込み頬を抑える じわじわとした痛みと共に口の中に血の味が広がる 「いつっ・・・」 「金払えねえんだからせめて俺らの憂さ晴らしくらいはできるようにしとけよな!!」 再び起き上がらせられ、腹に膝蹴りがめり込んだ 「がはっ!!」 そこから口火を切ったように3人はボコボコに殴り始めた 顔、腹、脚、背中 御構いなしだ、ただひたすら自分の人生の憂さを晴らすために殴りつけてくる 気づいたら空を仰いで倒れていた 体には鈍い痛みがある ゆっくりと起き上がり、服についた汚れを払う その手には3つの財布が握られていた 「はぁ、これっぽっちか 殴られてやってんだからもう少し入れといてほしいな」 溜息と共に中身が空になった財布をポケットにしまった 「今日は何食うかな・・・」 のそのそと歩き出す 部活の走り込みだろうか、スポーティな格好した生徒が汚らしい格好の自分をチラチラと見てくる もうそんな視線ごときじゃ何も感じない 縁石の上に置いてある誰のかもわからないカバンの中に財布を突っ込んだ 学校を出て、その足でスーパーに向かう 安い弁当、カップ麺、惣菜、そんなものばかりが目に入る まともな食材は買うことができない 「普通のもの買ってったら全部あいつに食われまう」 買った食べ物をボロボロのリュックに詰め込んでいく 中身がスカスカのリュックは、いつちぎれるか心配になるほど心許ないが頑張ってもらわなければ 帰宅路のどこかから曲名を思い出せないが、知っているメロディーが流れる 5時を知らせる放送だ 子供達が楽しそうにボールを抱えながら走っている 「いいな、幸せそうで」 そうポツリとつぶやき、少し早足で歩いた
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