正しく勇者を殺すには

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アランが戦いから帰ってきてもパレードなんかは開かれなかった 人々が向けたのは失望の眼差し 大軍で臨んだ魔王討伐作戦は、軍隊全滅、勇者のパーティ、そしてアイズ、ライルという人間の主力戦士たちを根こそぎさらわれるという散々なものであった たった1人で帰ってきたアランをねぎらうものは多くいたが、向けようのない怒りや苦しみや憎しみをアランにぶつける者も多くいたのだ 想像はしていたが辛い戦いで消耗した心には堪える歓迎であった アランは自分に何ができるのかわからないまま街を徘徊するしかなく最初の1日はただただ無駄に過ぎていった そんな時である (空が暗くなった・・・!? これは一体・・・) 突如、空を黒い雲のような物が多い、日光を遮断してしまった あたりは一気に夜のような暗がりに包まれる 「何か不吉なことが起きるんだぁ! もう終わりだぁぁぁぁ!!」 (違う・・・! これは恭介が作為的に行っていることだ! 何のために・・・? なにか理由があるはずだ 人々の不安や恐怖を煽るためか? 恭介は自分のやるべきことが見えている 俺は・・・何を・・・) ドォォォォォォォォォォン! 「っ!?何だ!!」 アランが振り替えるとインフォメーションターミナルの方で大規模な爆発が起こった 「あそこはまずい!! 人が多すぎる!!」 アランは疾風のごとくその場から駆け出した 「はぁっ・・・!はぁっ・・・!」 アランが現場につくとそこには無惨な光景が広がっていた 「そんな・・・」 そこには建物の痕跡は一切無く大きなクレーターができているだけ 人間の焼ける匂いが鼻をつく 丸焦げの人間、血を流す人間、のたうちまわる人間、爆発の恐怖でおかしくなった人間 阿鼻叫喚の図 「恭介・・・! ぐぅ・・・あああああああああああ!!!」 アランは地面を殴り付ける 地面に亀裂が入る 「俺にできることは・・・ 恭介・・・!お前を止めることだ!! 必ず止めてみせる! 止めなきゃならない!! そして、平和のために・・・殺す! 殺すんだ!!」 アランは走り出した 目的も計画も何もない ただ動いていないと気がすまなかった 動かなければアランの心は潰れてしまう寸前だった
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