正しく勇者を殺すには

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「・・・」 『待っておったぞ、勇者様よ』 アランは再び魔王城の前に来ていた 前回とは違い、正面から堂々と 城門から入り口までの通路、そこには魔族が勢揃いしていた どの魔族も敵意や殺意のこもった目を向けてくる (なんだこいつら、俺にそんな目を向けやがって あぁ、イライラする・・・ っ!?何を考えているんだ俺は こんなことで心を乱されてはいけない・・・!) 「待たせたな、恭介に会わせてくれ」 『来い』 ナノとアランが城に向かい歩き出すと 魔族達が道を開ける (おおかたゲイルとグレイルを殺したのを俺のせいにされたんだろう まぁ、元々ここの魔族に好かれていたとは思えないが) 『どうじゃった?この5日間は?』 「・・・色々とね」 結局アランは何をしたらいいのかわからなかった どうすれば、皆んなを救えるのか見当もつかなかった しかし、人から向けられる失望の目や度重なる爆破、魔族の攻撃 アランの精神はかなりすり減っていた もう、恭介を殺すという確固たる意志だけが彼を動かしていた ナノは広い城の中を右往左往する どこへ向かっているのかアランにはわからない 「どこに向かっているんだ?」 『恭介の待つところじゃ』 「君はどうして恭介にそこまで肩入れするんだ?」 『私は奴しか頼れん 貴様にはわかるまいよ』 「そうか・・・」 今までなら俺が力になると言ったのだろうか 俺が君を助けると言ったのだろうか しかし、アランはなぜかそんなことをいう気分にはなれなかった 「後・・・どのくらいで着くんだ・・・?」 『もうすぐじゃ』 「そうか・・・」 重たい沈黙が流れる アランは恭介に近づくと共に緊張感や焦り そして勇者として街や皆が傷ついたことに対する怒りが込み上げてくる ナノにまで聞こえるのではないかというほど心臓が鳴っている (これが最後だ・・・きっと・・・きっと!)
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