正しく勇者を殺すには

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「フューズ・・・」 「ふん・・・」 アランは目に涙を浮かべる 言葉が出てこない 親友であり戦友であったフューズの死 アランに与えた衝撃はいかほどか 死に慣れていないわけではない むしろたくさんの死を見てきた 当然魔族や魔物に襲われた人々達や人間同士の殺し合い しかし自分の最も近しい仲間が殺されるのは想像よりも心に重くのしかかる 更にはこれほど無惨に殺されたのだ 元の原型がないほどにぐちゃぐちゃに壊されたのだ アランは強い怒りを抱いた 恭介にも、自分にも 「くそ・・・!くそっ!くそぉ!!」 「そういうのいいから・・・次に行こうぜ? 時間が勿体無い 後五発お前が不発を出せば、お前は俺と戦える 俺を殺せるんだ 感傷的になってる場合か? 早く撃てよ」 「ぐっ・・・・!」 アランは歯ぎしりをする 悲しみを噛み締める時間すら与えられない しかし引き金を引かなければ何も始まらないし終わらない いつの間にか、アランに許された自由は自分に向けて引き金を引くことのみだ 「あぁぁぁぁぁぁ!!」 アランの咆哮をかき消すように、再び乾いた音が響いてしまった 「あ・・・あぁ・・・」 目を開けても、自分は未だ生きている 目線の先には魔王が満足げに笑っていた 「はい!セーフー! さぁ今度は誰だぁ?」 気づけば足下には紙屑が落ちている また仲間が死ぬ すでに震えが止まらない (俺のせいで、また誰かが・・・) 「さぁ!! 誰なんだ!!答えろよ!! 全て吹き飛ばされてえのかよ!!」 怒声がアランに考えさせる時間を、覚悟の時間を奪い去る 「・・・・ノ、ノーティだ・・・」 苦虫を噛み潰したような顔をする 今にも泣き出しそうだ 「ノーティか!いいねぇ! じゃあこんな殺し方はどうだ?」 そう言うとアランの元に頭上から鎖が落ちてくる 「掴め」 アランは言われたとおりその鎖を掴む 「っ!?」 急に鎖に重さがかかる 不意だったのでつい離しそうになってしまった 「これは・・・!?」 「その鎖はな、ノーティの手首についてる鎖だ それを離せばノーティが下に落下する んでは、ナノ!」 『了解じゃ』 ナノが手を叩く、すると 床が割れ、刃物でできた扇風機の羽のようなものが現れ高速で回りだした 「・・・・!?」 アランは目を見開く 自分が手を離したらノーティがズタズタに切り裂かれてしまう 「さぁて?耐えてくれよ?」 恭介は笑みを浮かべながらアランに近づいていく
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