正しく勇者を殺すには

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「なんだ、まだ元気じゃないか? なら・・・よっと!!」 ベギャッ!! 「がぁぁぁぁぁぁぁ!!」 アランの両脚に強烈なローキックをくらわせた 脚は異常な方向に曲がっている 膝から崩れ落ちつつもなんとか腕の筋肉だけで鎖を保つ 「ぐぅぅぅぅ・・・!」 踏ん張りがきかないため鎖に体を持っていかれそうになる 否、少しずつではあるが引っ張られつつあった 「まだ離さないのか? 楽になればいいじゃないか? お前があの女を見捨てれば済むじゃないか?」 「い・・・嫌だ・・・ 仲間は捨てれない・・・! 当たり前だろ・・・! 俺は貴様とは違う! 俺は勇者アランだぞ!!」 仲間のためか、勇者としての意地か、アランの咆哮は意図せずアランの心を建て直した ズルズルと引きずられていた体を腕力で止め、さらに自分の元へ鎖を引き寄せる 「あぁ、嫌か? まだ、頑張りたいのか・・・? じゃあ・・・次は何がいい?」 恭介がアランにささやく アランは度重なる激痛に恐怖していた 次何をされるかわからない それだけでかなりの恐怖になってしまう 建て直したはずの心は再び崩れかける 自分の意思はなんと弱いことか、その自らへの落胆が知らぬうちにさらなる心の崩壊をもたらしていた 「早く離せ・・・お前は解放される ・・・痛みから ・・・苦しみから」 「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!」 アランは最早限界に近い それに加えて心を揺さぶる言葉 「あぁっ!!?」 心の限界なのか、体力の底なのか、流れ出る血が手を滑らせたかアランの手から鎖がするっと抜けていく それと同時にノーティが落ちだす ノーティは頭から落下していく 「ノォォォティィィ!!!」 仲間が死ぬ間際だからだろうか 鍛え上げたその目の良さからなのだろうか ノーティの動きがスローモーションのようにはっきり見えてしまう 走りだそうにも、脚が折れていては走れない そしてついに、刃にダイブした 頭が切り刻まれる 鮮血が飛び散り、骨が砕かれる およそ、生きていて聞くことのないであろう音が響く 謎の液体を撒き散らし、内臓が飛び出てバウンドし更に切り刻まれる ほんの数瞬、1秒~3秒ほどの短い時間であるにもかかわらず、最早見ていることはできない あたりはノーティが作り出した血の海になった
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