正しく勇者を殺すには

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現実はかくも願ってもない、辛い答えを突きつけてくる 「セーフー!! いいくじ運だぜ!! はははは!!」 「なぜ、俺じゃない・・・!」 苦しみからの解放を望んでか、仲間を救いたい一心か、そんな言葉がこぼら出る 「何言ってんだよ? 本当は嬉しいんだろ? 仲間が盾になってくれて、自分は死ななくてすむんだから!」 「そんなことは!! ・・・ない」 「否定が弱くなったか? いいね・・・それでこそやりがいがある で?今回は誰だぁ!」 「嫌だ・・・読みたくない・・・」 「チッ!ちゃっちゃっとしろ!!」 「がぁっ!!」 恭介はアランを力任せに蹴り飛ばす 「ナノ!読んでやれ! 勇者様は字が読めなくなったらしいからよ!!」 『ふむ、では・・・アイズじゃの』 淡々と、事務処理のように紙を拾われ名前を呼ばれる アランは慌てて立ち上がった 「待て!待ってくれ!」 「なんだ?アイズは殺したくないか? じゃあ代わりに誰を殺す? そいつの代わりにアイズは助けてやるよ ただし身代わりには想像を絶する罰が待っている」 「そんな・・・!」 アランにはできない オーズの代わりに誰かを差し出すなんてことは しかしオーズも殺したくない 「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」 アランの呼吸は荒くなる 「タイムアップだ!!」 「な、なに!?」 「世の中で最も必要なこと、それは決断だぜ勇者様よ!! そして、社会は決断を待ってはくれない! 最低限の時間で答えが求められるんだよ!!」 「そんな!?」 「だが、お前の困り顔は面白かったからアイズは生かしておいてやろう」 「本当か・・・!?」 「ああ、本当だとも はっ!!」 恭介の手から何かが飛び出し、アイズの胸に当たる アイズは鎖が外れて地面に落下した 「恭介・・・?何をしたんだ・・・?」 「なんだろなぁ」 アイズ意識のないまま勝手に狼の姿になっていく それだけじゃない 牙、爪、毛皮、目付き、風貌すべてが恐ろしくおぞましくなっていく ウルフィンの力の解放とは比べ物にならない 「あいつの中の化け物の力を増幅させた あいつはもう二度と人の姿には戻れない あいつの記憶も消した 自分が何なのかわからず人から蔑まれ、恐れられ、嫌われ、はぶられ、孤立した人生を送るだろう まぁ、もう人じゃないがな」 「そんな・・・」 考えただけでも耐えられない 恭介が指をならすとアイズは床に飲まれ消えた
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