正しく勇者を殺すには

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恭介がふらつくティアを抱き抱えて立っている 二人の前にアランが立ち尽くす そしてゆっくりと剣を振り上げた 「・・・・」 恭介はその様子を瞬きせず真っ直ぐ見つめていた アランが剣を振りかぶる アランが剣を向けた相手は 「・・・死んでくれ」 世界を救った男の一撃 世界最強の男の一撃 そんな一撃なら無防備な魔王など、戦えぬティアなど豆腐やバターを切るかのごとく、簡単に両断できるだろう しかし 「え・・・?」 アランは渾身の力を込めて剣を振るった その向きは、魔王ではない 「おめでとう、勇者様・・・いや」 ティアだった 彼はティアに向け、その剣を振るったのだ しかしティアは無事だ 手に伝わるべき感触が全くないのだ 「どう・・・して?」 「くくくく・・・かははははははは!!」 アランはふと自分の手元を見て目を丸くする 「そんな・・・どうして!?」 アランの剣は刀身が中間からぽっきりと折れていた 折れた刀身は地面に突き刺さっている 「その剣は勇者の剣だ 勇者のためにあり、勇者と共にあり、勇者のためにつくられた剣だ そして、その勇者の剣が折れた どんな戦いにも耐えてきたその剣が 過去幾度となく、お前を救い続けてきたその剣が! それがどんな意味か・・・わかるか?」 アランは薄々と気づき始めてしまった 「嘘だ・・・嘘だ!! そんなことはない・・・嘘だぁ!!」 「もうお前は・・・勇者じゃない」
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