正しく勇者を殺すには

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自分が勇者ではない その事実はアランに強い衝撃を与える 頭を殴られたような倒れてしまいたくなるような衝撃 恭介の言葉が重く重くのしかかる 「うっ・・・!?」 突如アランの身体を強い脱力感が襲う 「ははは・・・力が抜けるのか?」 足がふらつき始める アランは恭介を睨んだまま膝をついてしまった 「そうだよなぁ・・・ 今お前の身体から勇者のスペックが抜け出てるんだよ 自分の力の急な弱体化に身体がついていっていないのさ 選ばれたものにだけ宿るスペックは、貴様を見限ったのさ」 「嘘だ・・・」 勇者の称号を失う それはアランにとってなによりも辛い 自分を証明する称号 それがなくなると自分には何もない 今のアランにはそう思わざるを得なかった 「勇者アランは今・・・死んだ」 「・・・・・・」 アランはうなだれる 全てを失った気がした 仲間も地位も名誉も人望も栄光も夢も希望も財も何もかも その全てが奪われた 目の前の、魔王の手によって 「ふぅ・・・はぁっ!!」 急激に魔力を上昇させ、恭介は第二形態に進化した 「かわいそうなやつだ・・・」 恭介はティアの肩を抱きアランのすぐそばに寝かせた 「ティア・・・」 アランはティアを見る 美しい顔立ちについ見とれてしまう もう彼女しか残っていない しかしアランにはそれが苦しかった ついさっき殺そうとしたのだから 「ほんとにかわいそうな女だ 生まれたときから生き方を決められ こんなクズと結婚させられ こんな目にあっている 生まれが違えば、タイミングが違えば、どうにかなったかもしれない だがお前のせいで彼女は苦しみ そして・・・」 恭介はティアに近づいていく 「・・・死んだ」 ブヂャッ!! 「!?!?!?」 恭介はおもむろにティアの顔を恐竜のようになった足で踏みつけた ティアの美しい顔は見るも無惨に崩れ去り 血やなにかもわからない体液が辺りを濡らしている 「あぁ・・・」 「ふふふ・・・」 「・・・ははは」 「ん?」 笑った アランが笑ったのだ 「はははは・・・はははは! ひゃははははははははは!!」 アランはその場から立ち上がり暴れるように動き回る 『壊れおった・・・!』
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