正しく勇者を殺すには

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「ひははははははは!! はーっはははははは!!」 「ナノ・・・どう思う?」 恭介はアランを見ながらナノに問いかける 『哀れ・・・としか言えんの』 「そうか・・・俺には滑稽に見える この俺が、負け組のこの俺が、世界最強の男をここまで追い詰めたんだ 笑わずにいられるもんか さぁ、奴の大切な物は全てうばった 後は・・・」 『一つだけじゃな』 「あぁ・・・」 恭介の手が赤く、燃えているように光り出す 「アラン・・・お別れだなぁ・・・」 恭介は魔力を右手に集めた アランから最後の奪うべきものを奪い去るために 「ふぅ・・・はぁぁぁぁぁ・・・」 恭介の手が燃え出す しかしアランはそんなこと気にもせずまだ笑い続けている 『どうするのじゃ・・・?』 「辛い死を・・・[パイロキネシス]」 恭介が唱えた瞬間 「ああああああああ!?」 アランを包むように身体が発火する 熱さに悶えるが炎が消える気配はない 「燃えろ・・・燃えろ!!」 火力はどんどんと上がっていく 「うぐあああああ!!」 呼吸をしようと懸命に口を開けようとするが あまりの熱に長時間口を開けることができない 「がはぁっ!!がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「はぁぁぁぁぁ・・・」 アランの身体についた炎が消えていく 「がはっ・・・」 アランは口から黒い煙を吐き出す 白目を向き膝をついて前のめりに倒れた 「ひゅー、ひゅー」 アランは心もとない呼吸を繰り返す 『まだ生きておるぞ?』 「スペックがなくなっても奴は強い身体と魔力を持っていた あの程度では死なないだろう だがそれでもあの炎が弱いわけではない ここで炎を止めたのは奴の呼吸器が焼けたから 全身に酷い火傷を負っているその時点で身体にはかなりのダメージ、つまり激痛が襲う 加えて奴の気道、肺を含めた呼吸器も損傷している 奴は激痛と呼吸困難に陥っているわけだが今まで鍛え上げてきた身体のおかげで死ぬことすらできない」 『・・・・!』 考えただけでもゾッとする 死ぬほどの痛みを受けながら死ぬことができない 助かる見込みもなくいずれ来る死を待つしかない これが恭介の殺しかた 正しく勇者を殺すにはこの方法だったのだ これが、正しい勇者の殺しかたなのだ
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