正しく勇者を殺すには

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「ごるぁぁぁぁぁぁぁ!!」 『はぁぁぁぁぁぁぁ!!』 恭介は立ち上がると同時に再び走り出していた 新たな町を襲うため、さらなる破壊を求めて 「ナノ!!」 『リリィ!?何をしておる!?』 ナノの横をリリィがついてきていた ナノのスピードは尋常ではない そのナノの肩にしがみつき、なんとか話しかけたのだら 「恭介は!恭介はどうなるの!?」 『こやつは力が暴走して身体を蝕んでおる!! このままいけば勝手に身体が崩壊するじゃろう!! じゃからその前に私が止める!! じゃが、恐らく恭介は死ぬ!』 「どうして!?」 『か、かなり力の侵食が進んでおるんじゃ・・・! 最早正気に戻すための攻撃はそのままこやつを殺すほどの威力のものになってしまうじゃろう・・・ もう手遅れじゃ!! じゃから頼む!! リリィ、ぬしも逃げてくれ!! 恭介を愛するお前を こやつの傍らにいたお前を!! 恭介に殺させたくはない!!』 「そんなっ!恭介ぇぇ!!」 リリィは叫んだ 涙をその小さな目に溢れさせて 生きていながら、愛する者を失うその辛さ 愛する者のために何もできない無力感は、リリィの心を深々とえぐっていた 『頼む!!リリィ!!』 「お願い・・・ナノ・・・ 恭介を・・・止めて・・・」 リリィはナノの肩から手を離した 徐々に減速してその場から離れていく ナノは心が痛かった こんなにも恭介のことを思っている健気な精霊に 自らの力を取り戻すための嘘をつかなければならないことに
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