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12cm
とある家電量販店で、私は掃除機を探していた。
店員に尋ねる。
「掃除機を探しているのですが、どこにありますか?」
店員は、私の意識に残らない、決まりきったなんらかの文句を言い、私を先導して矢鱈に白い通路を歩いた。
ある程度進み、店員は曲がり角の奥を手で指し示す。
「ここは、掃除機になります」
外国人だったのだろうか?
奇妙なイントネーションで奇妙な言葉を発した店員は、上司と思われる男に呼ばれ、そそくさと去っていった。
その意味するところは伝わったので、私は角を曲がる。
するとどうだろうか?
そこには掃除機が無いどころか、ただ何も乗せられていない灰色の棚があるばかりで、私は首を捻ってから後ろを振り向くことにした。
後ろを振り向いた。
その空間は、蛇腹状に波打っていた。
起伏の激しい床に足をとられながら、私はわけもわからずに走る。
次第に湾曲して筒状になっていく通路には分かれ道が無く、天井までぴっしりと伸びた棚と、地面、天井、それらが組み合わさって、全く逃げ場が無い。
さらにある程度進むと、急激に筒は細くなっていき、やがて点になっていく。
私は半狂乱になって、自分でもわけのわからないことを叫びながら、その点に向かって体当たりを繰り返した。
ずずっ。
ぶおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
突然体が後ろに引っ張られる。
地面の出っ張りにしがみつくが、轟音により鼓膜が破れた辺りで、腕の力が尽きて、私は後ろへと吸い込まれる。
もうどうにもならず、吸い込まれている間に、他にすることも無いので、正面の点の辺りを見ていると、私を案内した店員を呼び戻した上司と思われる男が、体を埃のようにして、筒の中を舞っていた。
その後間もなく私は、フィルターを通りきれず粉々になり、絶命した。
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