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これは私の生まれ育った村に古くから伝わる、ある迷信についてのお話です。
私は社会人になり5年目の夏、例年と同じように夏季休暇を利用して実家に帰省しました。その際、私の実家を訪れた親友のK子からある話を聞かされ、それを機にこの迷信について深く考えさせられることになりました。
私の実家はK県のとある小さな村にあります。同い年のK子とは物心つく前からの関係で、数少ない親友と呼べる存在です。就職を機に東京に出た私とは対照的に、K子は地元に残り村役場に就職しました。
K子は私が帰省する際には必ず実家に顔を出してくれていました。この日も変わらず、私が実家に着いてしばらくするとK子が訪ねてきました。
ですがいつもとは少し様子が違い、顔色が優れないように感じました。積もる話もありましたが、私はK子の様子が気掛かりで事情を訊くことにしました。
K子が話し始めた内容は、私が予想すらしていないものでした。
それはこの村で古くから恐れられているある迷信についてでした。『白霞泉(びゃっかせん)』と言われる小さな泉にまつわる迷信です。
この村に住んでいる者なら誰しもが知っているもので、私やK子も例外ではありませんでした。
白霞泉は村の外れにある林道の入り口からしばらく行った所にあります。木々に覆われ常に霞がかっていることからそう名付けられたそうです。白霞泉は神秘的な反面この世とは思えない雰囲気を醸し出しているため、地元の人でも滅多に近付くことはありません。
村では8月の第2週に『白霞水神際(びゃっかすいじんさい)』といわれる水神様を祭る例祭が行われます。
白霞泉の迷信というのは、この例祭が行われた日から一週間のうちに、白霞泉の水位が気象条件などの理由で泉の片隅に建てられた小さなお社に届いてしまうと、必ず誰かが水の事故で亡くなったり、神隠しにあうというものです。
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