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それから東京に帰るまでの3日間、私は毎日K子の様子を見に行きましたが、K子の身に変わったことは何も起こりませんでした。
東京に帰ってからもしばらくの間連絡を取っていましたがK子は無事でした。
ですが8月もあと数日を残したある日、K子から連絡が入りました。
村に住む一人の中学生が川での遊泳中に流され、数時間後下流で遺体が発見されたという内容でした。
当時一緒にいた同級生らの証言で、亡くなられた子も白霞泉の夢を見ていたことがわかったとのことです。ですがあまり迷信のことを気にしてはいなかったそうです。
白霞泉の夢を見ていた者の中でなぜその子が選ばれてしまったのかは甚だ疑問ではありますが、そもそもこの迷信自体が、神仏などによる祟りのようなものなのか、村人に水害や水難事故を警告してくださっているものなのかは誰一人わかる者はいません。
ただ一つ言えることは、前回迷信の条件に合致して以降の22年間、村では一人の水難事故被害者も出ておらず、今年に限ってこのような水難事故が起こってしまったことで、迷信の信憑性がまた一つ高まったということだけです。
ですが、今後このようなことが繰り返されないよう願うことぐらいしか私達にできることがないのも実情です。気休めではあっても今回の水難事故も偶然と考えるべきなのでしょうか。
ですが、やはり私には人智の及ばぬ力のようなものが働いているように思えてならないのです。
これが、私の生まれ育った村に伝わる白霞泉の迷信です。
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