第1章 出会いは一期一会

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 翌日、栞の取っている講義は午後からだった為、栞は午前中に銀行へ行き30万おろし、その足で古書店へと向かった。 古書店が、今日開いてるか分からないが、1日でも早く行かないとまた金額が上がりそうで心配だったのだ。  銀行から古書店へはそう遠くない。 しかし、大金を抱えて歩く商店街は、いつもと違う様に感じる。 (皆が私を見てる。恐い…)  正しくは持ったことのない大金を抱えている為、皆が自分のお金を狙ってるように感じる被害妄想と言うやつだ。 (お店開いてると良いけど…) 駆け足ぎみに古書店へ向かえば、古書店のシャッターは開いていた。 (良かった…)  栞は深く深呼吸をして胸を張り店内へ入る。 そこには、もう怯えていた栞の姿ではなく、背筋を伸ばし凛とした姿は、まるで今から戦いに挑む戦士だった。  栞は店に入ると真っ直ぐレジカウンターまで行き、本を読んでる男の前に、"バン" と、お金を叩き置いた。 男は本から一瞬視線を外し栞へ向けるが、再び本へと戻した。  (ちょっと!!無視しないでよ!)  栞は再び "バンバン" とお金の入った封筒を叩いた。 すると男は「うるさいなぁ!もぅなに?」と言って栞の顔を見て「それが見えないのかよ!?」と指差した。  男が指差した先を見ると【Anne of Green Gables】の入ったガラスケースには【非売品】の文字があった。
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