プロローグ

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 ここは図書館の中でもいちばん奥の部屋。古い本ばかりが置いてあって、持ち出し出来ない本ばかりがある。 その為、殆ど人は来ないし来たとしても、私を気に掛ける人はいない。  私は古紙の匂いが好き。それはどこか懐かしい香りがするから。  誰にも邪魔されず、好きな本を読んでいられるこの場所が好き。 ここは私の隠れ家的な場所なのだ。 私は書棚から読みかけの本を取り、壁際に置かれた木製の椅子に座り本を開く。今日の講義は午前中だけで、この後はもう無い。閉館までゆっくり本を読めると思うと、嬉しくなる。 (うふふ…今日はゆっくり出来るわ)  栞がそう思ったのも束の間。もう直ぐお昼という時間にアナウンスが掛かった。  『本日、お知らせしておりました通り、午後から設備点検の為、只今より休館とさせて頂きます。貸出手続きのある方はお急ぎ願います』とアナウンスが流れた。 (え? 嘘…)  いつも俯いて歩いていた栞は、入り口に貼られていた、休館のお知らせが目に入らなかった様だ。栞は仕方なく図書館を後にした。
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