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第1章 出会いは一期一会
店の入り口の引き戸は開いており、栞は恐る恐る店内を覗くが、店の中は薄暗くとても静かだった。
(営業してる…よね…?)
店内には、古書が所狭しと積み上げられており、少しでも触れ様ものなら雪崩のように崩れてしまうだろう。
栞は気を付けながらも店内を見渡した。古書店と言うだけあって随時古い物もある。ヨーロッパの古書も数多く並べられており、その中の1冊に目が止まった。
(あっ…)
栞は棚に上の方に置かれた本へ手を伸ばそうとするが、棚の前に積み上げられた本が邪魔をして全く手が届かない。
(ど、どうしよう…)
店の奥を見ると、店の人と思しき男の人が椅子に座り本を読んでいる。
「ぁ…」
店の人に声を掛けようとするが、なにせ人見知りの酷い栞には店員とて初対面の人にはなかなか声を掛けることが難しい。ましてや相手が男の人となると一層難しくなる。
栞は出直そうかと考えていると「何かお探しですか?」と店員が声を掛けた。
「ひぇっ…」
不意に声をかけられた驚きで、側にあった本の山を崩してしまった。
声を掛けたのはさっき迄、奥で本を読んでいた男だった。男はいつの間にか栞の側まで来ていたのだ。
驚き固まる栞に、男は「大丈夫?怪我はない?」と声を掛けた。
男は、栞が頷くのを確認すると、「整理しないとな…」と呟きながら、崩れてしまった本を拾い集め、また同じ様に積み上げた。
「…ぁ……」
(ちゃんと謝って 本を取って欲しいって
言わなきゃ…)
栞は俯いたまま、何度も声を出そうとするが、どうしても声を出せない。すると、俯いてる栞の眼下に本が現れた。
(え?…どうして?)
その本は、栞が手に取ろうとしていた、その本だった。
栞が本を受け取ると、男は「ごゆっくり」と言って奥へと行き、さっき迄座っていた椅子に腰掛け再び本を読み始めた。
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