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(どうして…どうしてこの本だと分かったの…?だってあの人ずっと本読んでたのに… もし、わたしを見てたとしても、この本だって分かるはずない…)
男が栞に渡した本【Anne of Green Gables】は同じ物が二冊あった。
だが、栞が欲しかった本は、彼が手渡したその物だった。
棚に並ぶ沢山の本の中から、栞が欲しがっている本を当て、そのうえ二冊あるうちの一冊を彼は当てた。
栞は驚き暫く彼を見ていた。
この本を探していた事は、栞は誰にも話していない。
寧ろ、栞自身が探していた事を忘れていたのだ。
(でも、なぜあの人は分かったの…? まるでわたしの記憶を透視したみたい。 まさか…偶然…そう偶然よ! 人の記憶を透視出来る人なんていない。きっと、たまたま…たまたまわたしの視線で分かったのよ!
そう! そうに決まってる!)
栞はそう自分に言い聞かせて、本を開いた。
表紙裏には、鉛筆で書かれた下手な文字。それはひらがなで、" しおり ゛と書いてあった。少し消えかかってはいるが、それは確かに栞が書いたものだった。栞はその文字を指でなぞり、その頃を思い出し懐かしく思う。
(よくお祖母ちゃんに読んで貰ったなぁ)
その本は栞の祖母の本だった。幼い頃祖母の家に遊びに行くと、必ず読んでもらっていた童話だった。
栞は幼い頃、この本が大好きで、祖母に『この本、栞にちょうだい?』と祖母に頼んでいた。
そして栞は、祖母に内緒でこっそりと自分の名前を書いてたのだ。
勿論、直に祖母に見つかってしまったが、祖母は笑って、『栞がお嫁さんに行く時にね?』と約束してくれた。
栞が本を好きになったのは、本好きだった祖母とこの本がきっかけだったのだ。
だが、栞が中学に上がった頃祖母は亡くなり、いつの間にか祖母の物はほとんどが処分されていた。
祖母が大切にしていた本も全て無くなっていたのだ。
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