2/23
745人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
バイト先の更衣室。 黒のカジュアルなスーツにピンク色のネクタイ、今日もバッチリ制服を着こなし、黄金に輝くローマ字で“REI”と書かれたネームバッジを真っすぐ正す。 ボブヘアのてっぺんについた糸くずを取り、軽く梳かして準備完了。 鏡付きのロッカーを閉じ、いざ店内へ。 大学に入って3度目の9月、分かっていてもこの季節はやっぱり忙しい。 「「いらっしゃいませー」」 店内にお客さんが入って来たことを知らせるベルが鳴ると、皆で声を合わせる。 ファミレス並の広さを誇る店内には今日もお客さんが一杯だ。 “THEスイーツキング” 沢山の種類から好きな具材をパフェにトッピングしたり、季節で変わる小さなケーキをいくらでも食べられたり、しかもそれらをリーズナブルな値段で楽しめるという若者に人気のチェーン店が私のバイト先。 だけど、その内容はかなりハードで......。 「白石さーん」 ほら来た。 早速私を呼ぶのは店長の丸山さん、何やらレジでトラブルらしい。 早足で移動し、どうしたんですか? と聞くと、 「なんかこれ、お会計出来ないんだけどぉ? 壊れたのかな?」 首を傾げている丸山さんの前で、明らかにイラついている高校生カップルに頭を下げ、スッとレジの画面を覗き込む。 「っとこれはー、まずここを押してから、ここをこうしないと」 丁寧に説明している私は無視し、ごめんねホントー、と適当な笑顔でその場を誤魔化す丸山さん。 聞いてくださいよー、年増のお姫ー! 「玲センパイ! 出来ました!」 と今度は後輩の野崎くんが丸眼鏡を曇らせながら声をかけてきた。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!