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バイト先の更衣室。
黒のカジュアルなスーツにピンク色のネクタイ、今日もバッチリ制服を着こなし、黄金に輝くローマ字で“REI”と書かれたネームバッジを真っすぐ正す。
ボブヘアのてっぺんについた糸くずを取り、軽く梳かして準備完了。
鏡付きのロッカーを閉じ、いざ店内へ。
大学に入って3度目の9月、分かっていてもこの季節はやっぱり忙しい。
「「いらっしゃいませー」」
店内にお客さんが入って来たことを知らせるベルが鳴ると、皆で声を合わせる。
ファミレス並の広さを誇る店内には今日もお客さんが一杯だ。
“THEスイーツキング”
沢山の種類から好きな具材をパフェにトッピングしたり、季節で変わる小さなケーキをいくらでも食べられたり、しかもそれらをリーズナブルな値段で楽しめるという若者に人気のチェーン店が私のバイト先。
だけど、その内容はかなりハードで......。
「白石さーん」
ほら来た。
早速私を呼ぶのは店長の丸山さん、何やらレジでトラブルらしい。
早足で移動し、どうしたんですか? と聞くと、
「なんかこれ、お会計出来ないんだけどぉ?
壊れたのかな?」
首を傾げている丸山さんの前で、明らかにイラついている高校生カップルに頭を下げ、スッとレジの画面を覗き込む。
「っとこれはー、まずここを押してから、ここをこうしないと」
丁寧に説明している私は無視し、ごめんねホントー、と適当な笑顔でその場を誤魔化す丸山さん。
聞いてくださいよー、年増のお姫ー!
「玲センパイ! 出来ました!」
と今度は後輩の野崎くんが丸眼鏡を曇らせながら声をかけてきた。
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