9/20
前へ
/160ページ
次へ
「いやいやそんな急に言わないでよ。 それは無理だよ、絶対無理」 扇ぐ手を止め、急に慌てだす丸山に、何がですか? 無表情で聞き返す。 「ハハハ、アハハハ」 何で笑ってんの? ついに壊れたか、この女。 私が怒っている事には多分、薄々感づいてるとは思う、だから大きく笑って空気を和ませようとしているんだ。 勝手に笑っていればいいと、私は恨みを込めた燃えるような視線で睨む。 「いや、契約ってのがあるからね? もし辞めるんだったら、違約金とか払わなきゃいけないよ? 半年置きに契約は更新されていくから、今急に辞めたら、うーんそうだなー、軽く見積もっても、5万円。 それに加えて制服代10万円、合計15万、払えるの?」 こんな話になると、こうやって少し真面目な口調で脅迫じみた事を言ってくる。 「まぁ15万くらい安いしね、別に辞めるって言うんならオーナーに言っててあげるけど?」 言いたい事だけ言って満足そうな顔をし、再び顔を扇ぎ始める。 そんな契約ある筈ないし、15万なんていう大金も払える訳がない。 「いや、そんな契約私知りません。 このままじゃ学校に通えなくなるし、アルバイトしてる場合じゃないんです」 「フッ、分かるけど決まりだからねぇ。 私にはどうすることも出来ないよ、幹部じゃないし」 それだけ言って、立ち尽くす私の事は無視してパソコン作業を始めてしまった。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

746人が本棚に入れています
本棚に追加