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何してるんだろう、こんな所で。 端から見れば変人だ、もしくはお笑いのコントで見るようなベタな悲劇のヒロイン。 恥ずかしい。止まって、お願いだから。 「うっ、グスッ」 ギュ、と目を瞑り、涙が染み出ていく隙間を無理やり埋める。 その時だったーー、 え? 背中に浴びていた直射日光が遮られ、微かな涼しさを感じ、思わず目を開く。 私の影が丸い影に覆われて、見えなくなっていた。 そのままの姿勢で、見上げるように振り返る。 立っていたのは、日傘で私に影を作る男の人。 暗いのと視界が滲んでいるのとでハッキリ顔が見えないけれど、 「......熱射病?」 優しいその声で、男の人はシンだとすぐに分かった。 あまりの驚きに、口を開いたまま黙っている私に、日傘が迫ってくる。 そのままポッサリと頭から被せられ、真正面、超近距離にシンの顔。 布団に潜っているような閉鎖空間で、彼と見つめ合う。 「......」「......」 蒸し暑さなど忘れてしまう極限の緊張。 心臓の鼓動は、丸聞こえなんじゃないかと思うほど、バクバクバクバク、激しく動き出す。 「ん?」 コテン、と首を傾げながら私の目元を見たシンはそっと親指で頬を伝う涙を拭ってくれた。 それからさっきと全く同じトーンで、 「熱射病?」 と聞いてきた。
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