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またも動きが止まってしまう丸山。
シンは少し俯き、はぁ、と一息吐いてから、前髪をスッと避け、怒りに燃える切れ長の目をギョロリと見開いた。
「こいつはな、カメラマンになるんだ。
てめぇのお世話してる時間なんて1秒たりともねぇんだよ、だから......!」
カメラマン? え?
シンには話したことのない内容が飛び出してき、瞬間的にボーッとしていると、
バアアアアン!!
はい、3発目。
マウスが動いてデスクから落下、繋がったコードのせいで宙づり状態になり、ゆっくりと回転している。
「明日から休む。
.....文句ある?」
爆裂音からの怨念声、これの連続で、図太い丸山の神経にもちゃんと響いたようだ。
あわあわと口を動かしながら、狼狽(うろた)えている。
「も、文句っていうか.....、そのぉ、い、違約金よ!そう、違約金がいるわ!」
「は?
バイト休むのに金いんの? この店」
「や、いやそうじゃなくてもし辞めるんなら、違約金がいるってこと!
と、というか早く出て行きなさいよ! これ以上ここにいるなら警察呼ぶわよ!」
落ち着きなく、絵に描いたようなテンパりっぷりで、最後には受話器を手に持ってシンを睨み付けた。
「呼びたきゃ勝手に呼べ。
違約金くらい俺がいくらでも払ってやるよ。おい帰んぞ」
結局何も言えずに、眼前の一部始終をキョトンと眺めるしか出来なかった私の前をシンが横切っていく。
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