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私は結局お店を辞める事になったのかな? イマイチ答えは分からないけれど。
とりあえず、胸の中に蠢(うごめ)いていたモヤモヤが、すんごいスッキリした。
言いたい事以上の事を短くハッキリ、とシンが言ってくれたお陰だ。
これで終わりじゃないわよー、と後ろで声を張る丸山は無視し、スタスタと歩いていくシンの背中に着いていく。
.....バタン。
事務所のドアを閉め、キッチンと男女の更衣室、合計4つのドアに囲まれた3畳ほどの密室空間で2人きりになる。
野崎くんと同じシチュエーションになった時とは全く違う緊張感。
ドアに手をかけたので、そのままキッチンへと出ていくのかと思いきや、ピタ、と止まって大きな背中がゆっくり振り向いた。
さっきの名残か、まだシンの表情はムスっとしている。
この距離から彼を見ると、私の頭はほぼ、真上を見上げるような角度になる。
ちょっと首が痛いけど、何か言いたげだし、他に目のやり場もないからそのままにしてみる。
「学校.....、」
籠った声でボソリと話し出したシンは、顔の向きは真っすぐで目線だけ私に下げ、ゴク、と唾を飲み込んで綺麗な首筋の喉仏を動かしてから、
「君がいないと、退屈。
......火曜日、来い」
と、言って視線を外した。
切れ長の目は眠たげで、口調もさっきまでの尖ったモノとは違う。
私は表情を忘れ、ポカン、としたまま、はい、と何も考えずに返事をしてしまった。
これ、本当にシンなの? どうしちゃったんだろう?
落ち着いて考えれば、こんなに助けられる程、私何かしたっけ?
むしろ、嫌われてたような気が......。
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