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この状況を頭の中で整理するにはもう少し時間がかかりそうだ。
こんな訳の分からない展開だっていうのに体はやっぱり疲れていて、目は、ただ眉毛にぶら下がって開いているような、気を抜けばいつでも眠れそうなくらい重たい。
「......」「......」
お互い、口を開かない、だけどそこにシンがいるから私は動けない。
このままこうしてる訳にもいかないから、チラチラと様子を窺い、タイミングを見てから、あのぉ......、と小声で切り出したと同時にーー、ポン、と頭に手が乗って来た。
「ーーっ!」
丸まっていた背がピクっと伸び、全身の血が頭部目指して一気に上昇してくる。
一々、唐突すぎるんだよ、シンは。 一体何を考えてるの?
撫でるというよりは、ご利益のある仏像に手を添えているという感じだろうか?
「......」
しばらくそのままの状態で、掌(てのひら)の熱を僅かに感じた頃、少し掠れた、でもとても温かい声で、「お疲れ」と呟いた。
冷え切って凍っていた心に、アツアツの石をそっと置かれたような気分。
ジワァと広がっていく優しさという名の温もり。
瞬く間に心がポカポカになり、その心地よさに私は何も言えなくなった。
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