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 あの土地に行ったのはそこそこ前だったので、俺の記憶もかなりうろ覚えだったが、それでも思い出せる限りのことを思い出し、俺は友達にアドバイスをした。そのかいあって、何度目かの電話で、友達は、やっと自分でも見慣れた場所に辿り着けたと言ってきた。 「この橋を渡ればもう地元だ。長々とつき合わせて悪かったよ。でも助かった。ありがとな」  訳に立ててよかったよ。そう返事をして通話を終えた後、俺は、以前に地元へ戻る前、別の橋を見たことを思い出した。  もしや友達は、間違えてあちらを渡ってしまってはいないだろうか。  気になり電話をかけるが、運転中なのか応答がない。それでも橋を渡り切れば一度は車を停めるだろうと待っていたが、向うから電話がかかてくることはなかった。  そして、この時のやりとりを最後に、友達の姿を見ることはなくなった。  誰に聞いても所在は知れず、ご両親は捜索願を出したが、半年近くが経過しても友達の消息は不明のままだ。  その半年の間にもう一度あの土地へ行ったみたが、今度はナビもスマホも良好で、まったく道に迷うことはなかった。ただ、あの日俺が渡るのをやめた橋だけは、どんなに探しても見つかることはなかった。  友達は間違えてあの橋を渡ってしまったのではないだろうか。そしてそりきり、戻れぬ場所に行ってしまったのではないだろうか。  あの日暗がりの中に浮かんだ、ろくに見えない橋の両サイドに並んでいた街灯。灯りの群れはいったいどこに向かう橋を照らしていたのか…きっと俺にその答えを知る時は来ないだろう。 橋…完
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