サボテン男と、僕と。【前編】

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 この男が姿を現したのは、今から一週間前――僕が祖母の家で過ごすようになって、二週間が経った頃の事だった。  その日、僕のサボテンに花が咲いた。  このサボテンは僕の宝物だった。こいつにはなんでも話せるし、悩み事も秘密も全部打ち明けられた。僕には友達という友達がいなかったので、僕にとっての友達はコイツだった。  だから祖母の家に行くときも、絶対にコイツだけは持って行こうと決めていた。そのときすでに、サボテンには赤いつぼみが一つついていた。  サボテンの花というものは、まれにしか咲かないものだと聞いていた僕は、咲くのが楽しみだったし、咲いたときは本当に感動した。大喜びをする僕を見て、祖母もまるで自分のように喜んでくれた。  咲いたその日、僕はずっとその花を見ていた。飽きるという言葉はそのとき僕の中にはなく、いつまでもそうしていたいとさえ思っていた。  が、そのときだ。  あの男が姿を現したのは。 『そんなずっと見てるなよなぁ。照れんだろう』  聞こえてきた声にハッとして瞬きをした瞬間、僕の目の前からサボテンが姿を消し、代わりにそこには見知らぬ男の姿があった。 『よぉ』   
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