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嘘つきな正直者達
私の本性を知った時、彼は私に失望するかもしれない。
彼は正直者な高校生だ。さらに言うと、困っている人を決して見捨てない正義感の持ち主でもある。そんな彼は、嘘吐きがきっと嫌いなのだと思う。だから私の本性を知った時、彼は私に失望をするのかもしれない。
「君は、いつも僕のしていることを手伝ってくれるね」
自主的な清掃。彼が勝手に始め、私も自分勝手な理由で手伝っている。正直かつ誠実、人格者な彼の気を引きたい、私が善行をするのは、ただただそのためだ。彼に嘘を吐くことが、行動を共にして印象を良くする手段なのだ。
しかし私は嘘吐きではあるけれども、別段嘘を吐くことが上手なわけでもない。きっと、近いうちには心の内が彼に知られ、私は拒絶をされて彼と一緒にいることが出来なくなってしまうだろう。だから、もうちょっとだけこのままの関係でいさせてください。「好きだ」という言葉も飲み込んでおきます。だから、お願いです。
私たちは掃除を終えた。西日が教室に差し込んでいる。日が暮れて、部活動の喧騒も和らいできた。彼と私、二人だけの時間も終わろうとしている。
「それじゃあ、僕は帰るね」
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