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「栞まで、ひどい」
「一番ひどいのはお前だ。後輩を危険にさらしてまで書いていい記事なんてない」
栞の知るテレビや雑誌のジャーナリストのイメージとなんだか違う。
無茶をしてでも、現地を取材して記事を書くのがジャーナリストという仕事なのだと思っていた。
「今はジャーナリストを管理する方の仕事なものでね。おい、日浦。いい機会だからお前の野望をきちんと彼女に話して許可を取れ。サラベナの件、タイトルは決まったのか」
そう言われると、理恵子の目は急にきらきらと光り出した。
「聞いて、栞。サラベナの美貌の王子が、側近にクーデターを起こされてから祖国を奪還するまでの物語。タイトルは『ホワイトゴールドプリンス』。ほら、サラベナってプラチナが特産でしょ。それとイケメンの王子様のイメージでピッタリじゃない? ねえ」
嬉々として話す理恵子に、栞は申し訳なく思いながら水を差した。
「あの、理恵子先輩」
「なに?」
「プラチナとホワイトゴールドは別の金属ですよ」
「へ?」
理恵子は松本の方を向いた。
松本も大きくうなずいた。
「まじで」
栞と松本はもう一度うなずいた。
「そうなの?! ピッタリだと思ったのに!!」
理恵子は天井を向いて、吠えた。
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