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「まあまあ、語呂もいいし、そのままでもいいんじゃないか?」
「そういうものなんですか?」
とはいえ白いタキシードの彼は、たしかにホワイトゴールドの王子さまだったので、悪くないかもと、栞もそれ以上はなにも言わないことにした。
帰り際に、理恵子からエステラのことを聞かされた。
最近当局の命令で活動が制限されている。
それどころか、行方不明だと。
彼女の後援者である政治家が起こした収賄事件が原因らしいのだが。
「くわしいことはよくわからないけど、かなりまずいことになってるみたい」
かなりまずいこと。
エステラが。
事故前にネット経由で少しだけおしゃべりした。
白い猫の陰に隠れるようにしていた小さな黒猫をカメラの前にまで抱いてきて言った。
「友達の猫が子供を産んで引き取ってくれっていうから、もう一匹飼うことにしたの。真っ黒できれいでしょう。あんたの髪みたいだからシオリって名前をつけたのよ。可愛がってね」
久しぶりに会ったと思ったら、猫の名前にされていた。
あの小猫は大きなピクセルとうまくやっているだろうか。
そして2匹の横で、エステラはあいかわらずマーにわがままを言っているのだろうか。
そんなことを思っていたのだった。
「なにかわかったら、教えてください」
「わかった。調べてみるね」
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