第23章

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カイトに聞くという手もあるのだが、メールでのやりとりの中で、彼の方からエステラの名前が出ることはない。 むしろこういうことは喬久の方が聞きやすいのだが、エステラのことを喬久に聞くのは、カイトに秘密を作るようなので、結局聞けずじまいだった。 カイトとエステラの仲が、以前どうだったかなんてわからない。 きっと、栞の想像以上に仲が良かったのだろう。 その思いが、栞の口からエステラの名前を出しづらくしていた。 程なく、エステラの失踪はネットニュースで記事になり、テレビのワイドショー番組でも取り上げられるようになった。 中国共産党の政治家の失脚に巻き込まれたというのが、大筋で。 件の政治家の収賄の片棒を担いだ。 政治家の愛人だった。 立場を利用して、他の有力政治家のスパイをしていた。 今は当局にすでに拘束されていて、解放のめどはたっていない。 などなど。 SNSではファンを裏切った、犯罪者の愛人などと、強い口調で罵られていた。 収賄で逮捕されたのは、以前彼女のライブを主催した政治家だった。 ピクセルと一緒にカイトの止まるホテルの一室で出会ったとき、ライブはしないとマーを困らせていた、あの時。 その政治家、中国共産党No.2とも言われる楊氏がある企業から多額の賄賂を受け取っていた事件。     
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