第24章

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それから数か月後、クーデターで自国を追われたサラベナ王子が、インドで亡命政府を樹立したというニュースがネットに掲載された。 テレビでは、国内の政治と為替の話題の後、ごく短い海外ニュースとして取り扱われた。 その日、久しぶりにカイトの声を聞くことができた。 パソコン越しに見る姿は、髪が伸びて額にかかっていた。 変わらず美しい姿。 でも疲れているようで、軽く咳もしていた。 姿に構ってはいられないような感じ。 もう連絡はあまり取ることはできない。 日本に通じている者がいると知れるのは危険だから。 それが女性ならなおさら。 植物園でのことがまた起きないとも限らない。 そう理解している。 カイトは時折ディスプレイに指を置くしぐさをする。 会いたいという気持ちをこめて、栞はその指に自分の指を重ねる。 そうして、しばらく2人で見つめ合う。 短いけれど、大切な時間。 それ以外には、時折喬久の母経由で短い手紙が届いた。 ほのかに花の香りが残る手紙。 そういったものが宝物になって、少しずつ栞の心の中に増えていった。 エステラのことは時間を見つけては、ネットで調べていた。 最新情報は、エステラの妹が収賄事件の中心である楊氏の息子の愛人であることだが、     
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