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それは暗に彼から直接連絡がないことの言い訳だった。
どうしたのだろうか。
今やサラベナ語の読み書きに不自由を感じなくなった栞は、現地からSNSで情報を発信しているサイトを捜し、読み漁った。
しかし、その内容は生活に密着したもので、家族の無事や食事の心配をつづったものが大半だった。
カイトの即位を喜んでいる者は多いようだったが、クーデター鎮圧の顛末を詳細に記述している記事はなく、そのあたりは情報統制されているという感じであった。
焦りを感じた。
会いに行きたい。
でも今、会いに行って彼は受け入れてくれるだろうか。
王となった今、栞という日本人女性はむしろいない方がいいのではないか。
明日にでも理恵子に連絡を取り、もう一度サラベナ行の相談をしようと思っていた時だった。
珍しく林志津子から電話があった。
夏枝が来ていて、あなたに渡すものがあると言っている。
林夏枝。
喬久の母親。
離婚後喬久と共に勢津子の元に身を寄せ、そのままカイトの口ぶりでは王族、特にカイトの周りで働いている。
日本滞在中に、サラベナとの仲介をしていたのは彼女だ。
栞の心臓は大きく脈打った。
週末、林家を訪れることになった。
悪い知らせである可能性をと考えると、足は軽やかとはいかなかった。
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