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栞は二人のやりとりを聞いて、肩を震わせて笑った。
座卓の向こうに志津子と夏枝が座る。
ここに喬久がいれば、三世代のの同じような顔が並んだに違いない。
「栞さん。カイトから手紙を預かってきました」
前置きなく夏枝は言い、栞の前に白い封筒を差し出した。
透かしの入った、厚手のあたたかみのあるコットンペーパー。
幾度かもらった手紙と同じ封筒だ。
栞はすっと息を吸った。
カイトの側にいると、必ず鼻をくすぐるあの白い花の匂いがした。
今までは夏枝が転送していた手紙を、どうして今回わざわざ手渡そうとするのだろう。
「内容は聞いていません。だた栞さんに手渡してほしいとだけ、喬久から」
喬久から。
開けることに、不安がよぎった。
栞は目の前の2人を見た。
2人からはなんの表情も読み取れず、ただ栞を見つめていた。
手紙に目を戻した。
きっとここには今のカイトがいる。
会いたい。
その思いで、栞は封を切った。
栞。
名前を呼びかけて始まる。
簡潔に栞を気遣い、自分と喬久の状況を伝える。
しかし途中から文章は変わっていった。
王政を取り戻したあとも、上手く気持ちが切り替えられないでいる。
友人の父親を銃殺したこと、そのことは今も間違っていないと思っている。
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