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学校についた蓮は自分の机で考え事をしていた。
ここ最近起こる、知らない声に名前を呼ばれるという現象について。
寝てる間やふとした瞬間、自分には全く覚えのない声でひたすらに名前を呼ばれ続けている。
「ただの気のせいっていってしまえばそれまでなんだけどなぁ」
「おっすー」
そんな蓮に声をかけてきたのはクラスメイトの平山巧(ヒラヤマタクミ)
「おー巧」
「なんだよまた声が聞こえるって話か?」
「あー…まぁ」
「そんなんただの気のせいだってー夢でも見てんだろ」
友人たちにこの話をしてもこうやって一蹴されることが多く、蓮はこの問題を自分一人で抱え込むようになった。
「ああ、そうだよな。疲れてるんだよなー」
そういって笑うことしかできなかった。
☆ ☆ ☆
学校を終えて施設に戻った蓮に休む暇はない。
子供たちの夕飯。風呂。洗濯。いつも寝るのは日をまたぐことがほとんどだ。
「ふー…やっとみんな寝たか…」
全員を寝かしつけ、首を回しながら1階へと降りてきた。
「ん?」
そこにはいつも寝てるはずの園長がいた。
「なんだよじいさん珍しいな」
蓮は冷蔵庫を開けながら聞いた。
園長は慎重な面持ちで静かに言葉を発する。
「蓮…お前もこの施設を出てもいいんじゃぞ?」
蓮の手が止まる。
顔がこわばり、ゆっくり息を吸ってから園長のほうをむいた。
「馬鹿言えよ俺がいなくなってじいさん一人でガキどもの面倒みれるのかよ。それに俺はまだあんたに何も返せてねぇんだよ。川に捨てられた俺を拾ってここまで育ててくれたんだ…もう二度とそんなこと言うな!!」
そう言い残すと蓮は2階へと走っていった。
その後ろ姿を園長は少し寂しそうな顔で眺めた。
「俺がこの施設を守る。これからもずっと…」
自分の部屋に飛び込みそうつぶやくと蓮は布団にもぐる。自分さえ変わらなけばいつまでもこの生活が続くと信じていた。
この時までは。。。
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