1. the mercenary

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【2005年 アディスタン共和国】  「夢…か」  短い微睡みの中見た夢は、最愛の両親を亡くした日の事で、それから目覚めた麻理亜の躰はうっすらと汗で濡れていた。  よりにもよって初実戦の日に、あの日の夢を見るなんてと、麻理亜の口から微かな溜め息が漏れる。  あの日、自分から最愛の両親を奪ったのは、一発のIED(即席爆弾)で、それを使ったテロリストも共に自爆したという。  それを知ったのは、かなり成長してからの事だが、それ以降、テロは許されざる物となり、それをもって目的を為そうとするテロリストと渡り合える力を求めた。  それは、自分を引き取り育ててくれたゲイリーの望みではないだろうが、結果的に傭兵部隊を率いるゲイリーに引き取られた事は運命なのだと、今はっきり解った気がする。  この三年、ひたすらに生き残る術を学び、戦う術を磨き上げてきた。  だからこそ、初実戦前だと言うのに緊張も恐怖もなく、ジャングルの中で平然と微睡む事が出来たのだろう。  今、ここに自分が居るのは、両親の敵討ちの為でもないし、憎悪の為でもない。  平和に生きている人々の命を、無慈悲に奪うテロリストを討つ為に。 「パパ、ママ解ってくれるよね。 ゲイリーおじちゃんは何も悪くないし、ここに居るのは私が望んだ事。 だから見守ってて、私の戦いを」  そう麻理亜は、記憶の中の両親に語りかけた後、ふうっと息を吐き意識を任務モードへと切り替えた。
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