1. the mercenary

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 西アフリカの小国の一つ。アディスタン共和国は、まだ誕生して間もない国だった。  今から二年前、長年この国を支配してきた独裁者をクーデターにより打ち倒し、現政権が後を引き継ぐ事となったが、まだこの国は混乱の様相から抜けきれないでいるという。  その混乱に乗じて、政権を追われた一部の者がテロリストにまで成り下がり、その矛先は政権ではなく一般人へと向かい、小規模なテロ活動を始めたのが半年前の事だった。  現政権となって、長年途絶していたイギリスとの国交も回復し、近くイギリス連邦への再加入交渉が始まるとの事で、アディスタン共和国に入国したイギリス人も多いと聞く。  政治絡み。経済絡み。軍事絡み。    その背景は色々あるだろうし、自分がここに居るのも軍事絡みと言えるのだろうが、その目的がどうであれ、今そこにある混乱を収めなければ、何も始まらないという認識は一致している筈だ。  そんな中で、自分に出来る事は戦う事で、この敵を見付け次第無力化するという威力偵察を行う事で、非戦闘員がほんの少しでも、テロの脅威から遠ざかる事が出来たらと麻理亜は願って止まない。    敵は、鬱蒼と茂るジャングルを隠れ蓑にしているつもりだろうが、既にその拠点の目星は付いていて、装備も貧弱だという。  なのにアディスタンの国軍が動かないのは、生まれ変わったばかりの国軍という現状と、情報漏れを心配しての事だろうし、PPCの総司令であり、義父でもあるゲイリー・ギャレーとイギリス情報部が懇意という関係性が、この作戦を生んだとも言えた。
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