1. the mercenary

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 作戦は単純。狩りのような物だ。  地図によれば、あと1キロ弱で敵の拠点に到達するようだが、今のところ見張りの姿も無ければ、侵入者を拒むトラップの設置もない。  元々、鷹揚だと言われるアディスタンの国民性もあるのだろうが、そんな国民性を下地に長く独裁政権を続けてきた敵は、どこか甘いのだろうし、だからこその油断が無数の隙を生んでいる。 《警察機構も無く、国軍も動か無い中、全くの部外者の私達がその隙を衝く》  それを行うチームは、自分と古参兵のリチャードの二人だけだが、それで十分だろうと思える程に、脅威レベルは低かった。   もう間もなく30分の休憩は終わり、歩哨に立つリチャードが戻ってきたら狩りの再開となる。  逸る気持ちも、躊躇う気持ちも、恐怖もない。    それは今までの厳しい訓練の賜物で、それを課したのもゲイリーの愛情だったのだと、今更ながらに感謝しつつ麻理亜は、レーションパックからフルーツビスケットを取り出して口に運んだ。 「ああ…糖分染みる」  それなりに消耗した体で頬張るフルーツビスケットは、まるでプレミアムなスイーツのようで、ホーホーと野鳥らしき鳴き声が響く中、ビスケットにかぶりつく麻理亜の姿はどこかシュールだった。  
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