1. the mercenary

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【20分後 敵拠点近辺】 「それにしても歩哨が一人とはな。 あの歩哨とこの地図が無ければ、到底拠点とは思えないな」  茂みに隠れ、双眼鏡で状況確認を行うリチャード・ソーンに麻理亜はええと頷く。 「パッと見、小さな洞窟だもんね。 それに周囲を嶮岨な崖で覆われ、洞窟へ入るには正面を突破する以外に道は無い。 敵としては、意外性と守り易さを考えてここを選んだつもりでしょうけど…」 「全てに甘いって言いたいんだろ?」  まるで自分の考えを読んだかの様なリチャードの言葉に、麻理亜はふっと笑みを浮かべた。 「結局、敵の軍略は部族抗争のレベルから抜けきれて無いし、現代戦の目から視れば、この拠点はただの攻めやすい場所でしかないもん」 「良く出来ました。リトルエンジェル。 その目はキャプテンゲイリー直伝って奴か?」 「そうなんだろうね。パパの口癖だったから。 モノを視る目が生死を別けるんだって… でも、それ以前に敵の全てがザル過ぎるだけよ」  そんな麻理亜の言葉に微笑むリチャードは、ゲイリーとの付き合いは長く、故に麻理亜も幼い頃からリチャードを知っていた。  だからこそ、あまり多くを語らずとも通じ合える訳で、そんなリチャードがバディというこの状況は何より心強かった。 「そう。ザル過ぎる。しかもこっちは洞窟内部の構造も把握している。 後は、中に敵が何人潜んでいるかだな」 「それをあの歩哨に訊いてみる? それともさっさと片付けて、先に進む?」  そう麻理亜が尋ねるとリチャードは笑って言った。 「それはマリアが決めろ。俺はそれに従う」  リチャードが返した予想外の答えに、麻理亜は思わず戸惑ってしまった。
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