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【20分後 敵拠点近辺】
「それにしても歩哨が一人とはな。
あの歩哨とこの地図が無ければ、到底拠点とは思えないな」
茂みに隠れ、双眼鏡で状況確認を行うリチャード・ソーンに麻理亜はええと頷く。
「パッと見、小さな洞窟だもんね。
それに周囲を嶮岨な崖で覆われ、洞窟へ入るには正面を突破する以外に道は無い。
敵としては、意外性と守り易さを考えてここを選んだつもりでしょうけど…」
「全てに甘いって言いたいんだろ?」
まるで自分の考えを読んだかの様なリチャードの言葉に、麻理亜はふっと笑みを浮かべた。
「結局、敵の軍略は部族抗争のレベルから抜けきれて無いし、現代戦の目から視れば、この拠点はただの攻めやすい場所でしかないもん」
「良く出来ました。リトルエンジェル。
その目はキャプテンゲイリー直伝って奴か?」
「そうなんだろうね。パパの口癖だったから。
モノを視る目が生死を別けるんだって…
でも、それ以前に敵の全てがザル過ぎるだけよ」
そんな麻理亜の言葉に微笑むリチャードは、ゲイリーとの付き合いは長く、故に麻理亜も幼い頃からリチャードを知っていた。
だからこそ、あまり多くを語らずとも通じ合える訳で、そんなリチャードがバディというこの状況は何より心強かった。
「そう。ザル過ぎる。しかもこっちは洞窟内部の構造も把握している。
後は、中に敵が何人潜んでいるかだな」
「それをあの歩哨に訊いてみる?
それともさっさと片付けて、先に進む?」
そう麻理亜が尋ねるとリチャードは笑って言った。
「それはマリアが決めろ。俺はそれに従う」
リチャードが返した予想外の答えに、麻理亜は思わず戸惑ってしまった。
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