14人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
「マリア…大丈夫か?」
そう訊ねるリチャードの表情は固い。
それは初めて人を殺した自分を慮っての事だろうが、今は悔悟や感傷に浸る時では無い。
その反動だろうか?
自分でも驚く程に頭の中は冷静で、動揺する事も無く、いつの間にか瞼を濡らした泪も止まっていた。
「私は大丈夫。
どうやら中の敵は10人らしい。二人で十分対処可能だろうけど、ここから先はリチャードの指示に従う方が効率的だと私は思うけど?」
「全く…初戦でここまで冷静沈着なルーキーさん見たのは初めてだよ。リトルエンジェル」
呆れたのか、それとも認めてくれたのか、ともかくリチャードは笑っていた。
そして今。
リトルエンジェルと呼ばれていた自分から、新たな何かへと変わろうとしている事は確かで、それが何なのかはまだ解らない。
それが堕天使であろうが、悪魔であろうが、どれだけこの手が血に塗れようが、守るべき物の為に戦う気持ちに変わりは無い。
「よし。マリアも大丈夫そうだし、敵がまだこっちに気付いて無いうちに一気に片を付けるぞ。行けるな?」
「ええ。問題無い」
麻理亜はSIGのセレクターを単射から点射へと切り替えた後、リチャードに頷いた。
「よし!行くぞ!」
ここから先は生きるか死ぬか。
その中で躊躇う事は、自分だけでなく大切なリチャードすらも危険に晒す。
だから敵に対しては躊躇わない。
リチャードの後に続きながら麻理亜は、感情のスイッチを切り、意識の全てを目の前の戦闘へと振り向けた。
最初のコメントを投稿しよう!