1. the mercenary

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「マリア…大丈夫か?」  そう訊ねるリチャードの表情は固い。    それは初めて人を殺した自分を慮っての事だろうが、今は悔悟や感傷に浸る時では無い。  その反動だろうか?    自分でも驚く程に頭の中は冷静で、動揺する事も無く、いつの間にか瞼を濡らした泪も止まっていた。 「私は大丈夫。 どうやら中の敵は10人らしい。二人で十分対処可能だろうけど、ここから先はリチャードの指示に従う方が効率的だと私は思うけど?」 「全く…初戦でここまで冷静沈着なルーキーさん見たのは初めてだよ。リトルエンジェル」  呆れたのか、それとも認めてくれたのか、ともかくリチャードは笑っていた。  そして今。  リトルエンジェルと呼ばれていた自分から、新たな何かへと変わろうとしている事は確かで、それが何なのかはまだ解らない。  それが堕天使であろうが、悪魔であろうが、どれだけこの手が血に塗れようが、守るべき物の為に戦う気持ちに変わりは無い。 「よし。マリアも大丈夫そうだし、敵がまだこっちに気付いて無いうちに一気に片を付けるぞ。行けるな?」 「ええ。問題無い」  麻理亜はSIGのセレクターを単射から点射へと切り替えた後、リチャードに頷いた。 「よし!行くぞ!」  ここから先は生きるか死ぬか。    その中で躊躇う事は、自分だけでなく大切なリチャードすらも危険に晒す。  だから敵に対しては躊躇わない。  リチャードの後に続きながら麻理亜は、感情のスイッチを切り、意識の全てを目の前の戦闘へと振り向けた。
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