1. the mercenary

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【2008年 10月末 ウェールズ・モリストン墓地】 《YUUYA KUROSAKI・RISA KUROSAKI》  父と母の名が彫られた墓碑の前に、花束を捧げた後麻理亜は、今は亡き両親と語り合うかのように、小雨そぼ降る中傘も差さずに、しばらくそこに立ち尽していた。  ここを最後に訪れたのは、初実戦に旅立つ直前で、それから三年経ってた訳だが、振り返るとあっという間だった気がする。  あのアディスタン共和国での作戦も、結局さしたる抵抗も無く、敵の首領を生きたまま捕らえる事に成功し、アディスタン政府へと身柄を引き渡した。  作戦が終わって、宿舎で一人になった時初めて、人を殺してしまった事に胸が締め付けられ、泣きまくってた事も、今となれば懐かしいとさえ思える。  それ以降、多くの人の命を奪ってきた訳だが、それで守られた命もあると目の当たりにしてきたからこそ、戦い続けてこれたのだと今更ながら解った気がした。 《でも…もう…》  雨粒で濡れた麻理亜のくちびるから溜息が洩れ出し、誰も居ない墓地の中の空気を僅かに揺らす。  先日のオペレーション・ブラッディトマトを経験して以降、今まで通りに戦い続ける事は不可能だったし、もうその資格も無い。  あれ以降、夜もロクに眠れぬまま贖罪の道を探し続けた結果、一つの答えに辿り着いた。
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