1. the mercenary

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 結局。ブラッディ・トマトは他のブラックオペレーション同様、徹底した情報操作と隠蔽が施されており、事の真相が表に出る事は無い。  それがブラックオペレーションの性質だと三年近くの傭兵生活で理解もしていたし、もしあの時。ガディンの恋人の姿を見る事が無ければ、自分はまだ戦い続ける日々を続けていただろうと思う。 《シェリ・ザル・ガディンを殺したのは、アメリカ海兵隊出身で元傭兵のジョニー・ウォーカー。 その動機はガディンの恋人のソフィア・オブライエンへの異常偏愛によるもの…》  あの時、B・Mが言っていたシナリオがそれで、ガディンはテロリストしてではなく、ただの哀れな彼氏として殺された…という報道がオランダで為されたというが、あくまでも局地的な事件として、日々移り変わるニュースの中、事の真相は闇に葬られる事となった。  だからこそ自分に何一つ被害が及ぶ事も無かった訳だが、昔ならいざ知らず、事ここに至った今、そのシナリオを黙って受け入れる気は無かった。  幼い頃。突如として愛する両親を奪われた自分のように、愛する者を奪われてしまったソフィアに、彼を殺したのは自分だと伝える。  それをやる事で、後の自分の運命がどうなろうとも、作戦の中身も当事者も全て伏せたまま、先ずはソフィアに会う。  それが麻理亜が考えた贖罪の形だった。  
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