1. the mercenary

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 それをゲイリーに話し、当然反対されまくった訳だが、何とか説き伏せて、先ずは部隊の人間がその為の事前情報収集へとオランダへと向かったのが昨日の夜で、もう間もなく連絡が入る事だろう。  あの時、感じた絶望は心の奥に消える事無く息づいていて麻理亜を苛み続けている。  この血塗られた手が犯して来た罪は、死ぬまで消えない事は知ってるし、背負っていく覚悟はとうの昔に出来ている。  だが、生まれて初めて経験する、昼も夜も自分を苛み続ける絶望はそれとは別物で、ソフィアと会う事でしか状況が変わる事は無いのだろうと麻理亜は思う。 《それが…今の私に出来るたった一つの戦いなのかも知れない》  戦いとなれば、例え絶望に苛まれる中であろうと、頭の中も心の中も冷静で無ければならないし、例え食欲がなかろうと、無理矢理でも腹に何か入れておく必要がある。 《パパ・ママ…今まで私が生き延びる事が出来たのは奇跡だと思う。 でも、今度ばかりは何とも言えないけど、パパやママ。それにゲイリーパパの娘として恥じない、私なりの戦いをするつもりだから、見守ってて…》  瞳に強い光を灯しながら麻理亜が胸中にそう呟く中、懐の携帯が鳴り響いた。 《来た!》  ひったくるように携帯を手に取り通話ボタンを押す。 「はい! で、どうだった? …嘘。………そんな………うん。解っ…た」  待ち焦がれていた電話は最悪の知らせで、ソフィアは既に自分の命を絶っていた…という内容だった。  その原因を作ったのは…他の誰でも無い自分だという、拭いようの無い事実が麻理亜から思考を奪い、もう何も考えられない程に頭の中が真っ白となった麻理亜は、その場に力無くくずおれた。 「うあぁぁぁぁーッ……」  そぼ降る雨が、地面にくずおれる麻理亜の亜麻色の髪を濡らし、とめどなく溢れ出す涙が頬を伝い地面へと落ちていく。  誰も居ない雨に烟る墓地の中、麻理亜の慟哭だけが哀しげに響いていた。
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