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【2006年9月 コンゴ民主共和国】
灼熱の陽射しの下。
コンゴ川を見下ろす小高い丘の上。
鬱蒼と茂る繁みの中に身を潜めた麻理亜は、双眼鏡で対岸の様子を窺っていた。
《敵さんおいでなすったぜ。マリィ見えてるか?》
そう楽しげに告げる。カイト・ディセンベルクの声がヘッドセットに響き、麻理亜は軽く顔をしかめつつ、対岸の繁みに潜み敵に奇襲を掛ける役目を負うカイトに通信を入れた。
「KAよりDD。遊びじゃないのよ?今は。
私がバックアップしてるとは言え、そんな気持ちじゃ………」
《はいはい。殺られるってんだろ?
ったく、ピジョンのエンジェルさんは小言が多い事で》
そう笑うカイトもまた傭兵であり、デヴィット&ポールIncというアメリカの民間軍事企業に属していた。
カイトも自分と同じくティーンエージャーらしいが、無邪気な素振りとは裏腹に戦闘能力は高いと聞いていた。
だが、アメリカンな青春ドラマを地で行く様なカイトを見てると、とてもそうは思えないというのが麻理亜の本音である。
そんな彼と自分に課せられた任務は、今まさに450メートルで設定したキルゾーンに近付きつつある、対岸からこちらへの渡河を目論む、野盗崩れの連中10人を阻止する事だった。
その状況下で、たった1人で10人の敵を相手にする事になるカイトの実力が未知数だからこそ、彼を死なせない為には、傍らに置いているスナイパーライフルL96A1の高性能と、今まであらゆるレンジで磨いてきた銃器のスキルとセンスを、限界以上に発揮する必要があった。
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