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「…どぅ?」
そう聞かれ、
「じょーず…だね」
なんて答えた。
赤黒い壁紙の中の花柄が気持ち悪さを倍増させる。
やたらとかいた汗が時々ポタリと腹のあたりに落ちて来てその度にひやりとしていく気持ち悪さを誤魔化すように視線を彷徨わせ、
ガラスに残された雑な掃除の後を見つけては頭の中で嘲笑う…
そうして時間だけが経つのを過ぎれば
「あ、ありがとぅ…」
どれだけ自分に自信がないのか、慌てて腕を通しながらズボンから財布を取り出し、皺の入った名刺をソッとテーブルの上のメニューに重ねた。
「こちらこそ…」
それには目線をやらず、シーツに転がり足を伸ばす。
「また。よ、呼んでも…?」
ズボンのボタンを閉め損ね、ガチャガチャとベルトをその上に締めた。
笑い出しそうになりながら
いかにもバカにしてしまいそうな自分を抑えて笑顔を作る。
「ありがとうございます」
これが、仕事。
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