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俺は病院で目を覚ましていた。
「生きているのか……!?」
どうやら酔っていた俺は、襲い来るトラックを難なく避け、階段を転ぶ瞬間に華麗なバック転を決め、聖剣を手に斬りかかる女子高生を体よくあしらった後、ホームから落ちて気絶したところを駅員に発見され、この病院に運ばれたらしい。
要するに、俺は生きているのだ。
では、今までの出来事は夢だったのだろうか……
そうでなければ、あの支離滅裂な死者の列車などあり得ないし、ましてや俺にあんな行動力なんかあるはず無いのだから……
でも……
――例え夢でも、あの少女には幸せになって欲しい……
入院して暫くしたある日……
指名手配の爆弾魔が腐乱死体で発見されたというニュースが流れた。どうやら、脅迫事件を起こして手に入れた金の分け前をめぐる揉め事で殺されたらしい。
そしてもう一つ……
急に産気づいた妊婦が担ぎ込まれ、この病院で女の子を出産したのだ。
看護師の話に依れば、何でもその赤子の両親は、以前、子供を不治の病でなくしているそうだ。
――そうか、生まれ変われたんだ……
あの出来事が本当だったのかどうかはわからない。
赤子のことも、ただの偶然かも知れない。
しかし、俺は信じたかった……
もし、あの出来事が本当なら、今日も、地下世界では死者を乗せた列車があの世の各駅に停まっていることだろう。
万感の思いをこめ、列車は走る。
さらば少女……
さらば爆弾魔……
さらば、幽霊列車……
さらば……俺の臨死体験……
なんちゃって……
了
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